用語集(基板実装関連)
基盤実装とは
基板実装とは
基板実装とは、電子機器の“心臓部”であるプリント基板に、抵抗・コンデンサ・半導体などの電子部品を取り付ける工程です。スマートフォンや家電、自動車、産業機器など、あらゆる電子製品は基板実装によってその機能を実現しています。
道具・機械関連
手動工具・消耗品
コテ(はんだゴテ):はんだを加熱・溶融して部品を接合するための加熱工具
コテ先:はんだゴテの先端部。形状により用途が異なる
┗ C型:曲面で広範囲を処理。ドラッグはんだに適する
┗ K型:刃型で細かい部品や切り込みに対応
┗ D型:平面で面積の広い接合に使用
┗ ペン型:細かい作業や精密部品に適した細長形状
はんだ(半田):金属接合に用いる合金。電気的・機械的接続を形成
┗ 鉛フリーはんだ:環境対応型。RoHS準拠
┗ 共晶はんだ:鉛入り。低融点で扱いやすい
┗ 糸はんだ:フラックス入り。手はんだ作業に適する
┗ 棒はんだ:ディップ・はんだ槽用の大容量形状
フラックス
酸化膜除去・濡れ性向上・再酸化防止を担う薬剤
はんだペースト
粉末はんだ+フラックスの混合物。SMD実装に使用
はんだ吸い取り線
不要なはんだを除去する銅編線
IPA(イソプロピルアルコール)
フラックス残渣や汚れの除去に使用
ウエス
清掃・拭き取り用の布。IPAと併用
マスキングテープ
不要な部分へのはんだ・フラックス付着防止
ニッパー
リード線や部品端子の切断に使用
プライヤー
部品の保持・曲げ・引き抜きに使用
ピンセット
小型部品の配置・保持に使用
吸着ピンセット
静電気対策済みの真空保持型ピンセット
指サック
静電気・汚れから部品を保護する指先カバー
フォーミングツール
リード部品の端子形状を整える工具
リード部品
スルーホール実装用の端子付き部品群
温度・検査関連機器
こて先温度計・テスター
はんだゴテの温度精度を測定・管理する機器
デジタル式(温度管理機器)
温度表示がデジタル化された測定器
ダブルタイプ(温度管理機器)
複数チャンネルの温度同時測定が可能
静電気レベルメーター
作業環境の静電気レベルを数値化する測定器
フットウェアテスター
作業者の靴の静電気対策状態を検査する装置
リストストラップテスター
静電気除去用ストラップの導通状態を確認する装置
静電気対策機器・用品
静電気除去装置(イオナイザーなど)
空間の静電気を中和・除去する装置
リストストラップ
作業者の体に帯電した静電気を接地へ逃がす装着具
制電マット
作業台上の静電気を拡散・除去する導電性マット
加熱・実装支援機器
プリヒーター
基板全体を事前加熱し、はんだ付け時の熱衝撃を緩和
はんだ槽
棒はんだを溶融し、部品を浸して一括接合する装置
リフロー炉(Reflow Oven)
SMD部品をはんだペーストで一括加熱・接合する装置
ホットエアガン
局所加熱に使用する熱風式ツール。リワーク用途
熱風リワークステーション
SMD部品の交換・修理に用いる精密加熱装置
赤外線リワーク装置
赤外線による非接触加熱で部品を交換・修理する装置
BGAリワーク装置
BGAパッケージ専用の加熱・交換・検査装置
チップマウンター
SMD部品を基板に自動配置する装置
ディスペンサー
はんだペーストや接着剤を精密に吐出する装置
ウェーブはんだ装置
基板をはんだ波に通して一括接合する量産装置
検査・品質管理機器
はんだ印刷機(Solder Printer)
基板に正確な量のはんだペーストを印刷する装置
ピック&プレース装置(Pick and Place)
部品を自動で選択・配置する装置
自動挿入機(Axial/Radial Inserter)
リード部品を自動で基板に挿入する装置
自動検査ライン(ICT・FCT)
電気的導通・機能を自動で検査するライン装置
自動搬送装置(コンベア・ローダー)
基板や部品を工程間で自動搬送する装置
自動フラックス塗布装置
フラックスを基板に均一に塗布する装置
自動マスキング装置
不要部分に自動でマスキング処理を行う装置
自動化・量産設備
X線検査装置
BGAなど目視困難な内部接合を透視・検査する装置
AOI(自動外観検査装置)
画像処理により部品実装状態を自動判定する装置
マイクロスコープ
高倍率で部品・はんだ状態を観察する電子顕微鏡
実体顕微鏡
立体視可能な光学顕微鏡。手はんだ検査に使用
マルチメーター
電圧・電流・抵抗などを測定する汎用計測器
LCRメーター
インダクタンス・キャパシタンス・抵抗を測定する専用計測器
オシロスコープ
電気信号の波形を可視化し、動作確認・故障解析に使用
電子部品関連
パッケージ・実装形式
ASIC (ASIC:Application Specification Integrated Circuit)
特定用途に最適化された集積回路。汎用ICとは異なり、機能・構造が事前に固定されており、量産性・性能・消費電力の面で優れる。家電・通信・産業機器など、用途特化型の設計に使用される。
BGA (Ball Grid Array)
ICパッケージの底面に格子状に配置されたはんだボールを接点とする実装形式。高密度・高集積化が可能で、QFPよりも小型化・多端子化に適する。実装後の目視検査が困難なため、X線検査などが必要。
COB (Chip On Board)
ベアチップ(裸の半導体)を基板上に直接搭載し、ワイヤボンディングで接続する実装方式。パッケージを省略することで小型化・コスト削減が可能だが、保護封止や環境耐性が必要。
CSP (Chip Size Package)
チップサイズに近い寸法で構成された小型パッケージ。BGAと同様の構造を持つが、パッケージ外形がチップ寸法に近く、高密度実装・省スペース化に適する。モバイル機器などに多用される。
DIP (Dual inline Package)
両側面からリード端子が出ている直列配置型パッケージ。スルーホール実装に対応し、手はんだ・試作・教育用途に適する。古典的だが、信頼性と扱いやすさから一部用途で継続使用される。
IC(Integrated Circuit(集積回路))
複数の電子回路素子(トランジスタ・抵抗・コンデンサなど)を1つのチップ上に集積した構造体。論理処理・制御・演算・記憶など、電子機器の中枢機能を担う。パッケージ形式により実装方法が異なる。
LGA (Land Grid Array)
BGAに類似したパッケージだが、はんだボールの代わりに平面接点(ランド)を持つ構造。実装面に突起がないため、接触面積の制御や熱設計に工夫が必要。高密度・薄型実装に適する。
MCM (Multi Chip Module)
複数のICや小型部品を1つのモジュール内に集積した構造体。機能統合・省スペース・高性能化を目的とし、通信・医療・産業機器などで使用される。内部構造はCOB・BGA・CSPなどの複合形式を含む。
SMD (Surface Mount Device)
表面実装型の電子部品全般を指す用語。リード線を持たず、基板表面に直接はんだ付けされる構造。自動実装・高密度配置・小型化に適し、現代の電子機器では主流の実装形式。
SOP (Small Out-line Package)
DIPに似た形状だが、SMD対応の小型パッケージ。リード端子が側面から出ており、表面実装に対応。省スペース・量産性に優れ、アナログICやロジックICなどに広く使用される。
チップコンデンサ
SMD(表面実装)形状を持つコンデンサの総称であり、特に積層セラミックコンデンサ(MLCC)を指す場合が多い。材料や構造に応じて、電解型・フィルム型・タンタル型などもチップ形状で提供されるが、用語としては実装形態に基づく分類である。
CR (Capacitor&Resistor)
コンデンサと抵抗。
接続部品・構造体
コネクタ
コネクタとは、電子機器や電子部品に使用される電気および信号をつなぐ接続部品です。例えば、機器と機器をつないだり、機器内の基板とモジュールをつないで電気を通します。
タイミング・周波数制御部品
タイミングデバイス
電子回路やシステムにおいて、正確な時間・周波数・同期信号を生成・制御するための部品や回路の総称です。
主な種類に水晶振動子、セラミック振動子、RTC(リアルタイムクロック)、PLL(位相同期回路)、タイマーICなどがあり、
クリック信号の生成や、複数の回路や通信のタイミングを一致させたりするのに使用されます。
水晶振動子(Crystal Oscillator)
安定した周波数の発振源。クロック生成に使用。
セラミック振動子(Ceramic Resonator)
小型・安価な周波数源。マイコンなどに使用。
RTC(リアルタイムクロック)
Real-Time Clock 時刻保持用。電源オフでも動作。
PLL(位相同期回路)Phase-Locked Loop
周波数の乗算・分周・同期制御。
タイマーIC(Timer IC)
一定時間の遅延や周期信号の生成。例:555タイマー。
SAWデバイス(Surface Acoustic Wave Device)
表面弾性波(Surface Acoustic Wave)を利用して、信号のフィルタリングや周波数制御を行う電子部品です。主に高周波回路や通信機器に使用されます。
電気信号を圧電体表面の音響波に変換し、周波数選択性や共振特性を利用して信号処理を行う構造的部品である。 フィルタやレゾネータとしての役割を持ち、高周波通信の安定性と選択性を保証する技術的基盤となっている。
SAWフィルタ(SAW Filter)
定の周波数帯域を通過・遮断する為に利用されるフィルタ。
SAWレゾネータ(SAW Resonator)
安定した共振周波数を生成する素子。
コンデンサ群(蓄電・フィルタ)
コンデンサ(Condenser) = キャパシタ
キャパシタ(Capacitor)= コンデンサ
キャパシタとは、電気エネルギーを静電的に蓄える電子部品であり、2つの導体(電極)間に絶縁体(誘電体)を挟んだ構造を持ちます。 「コンデンサ」と同義であり、特に技術文書や英語圏では「キャパシタ」が一般的な表記です。
主な役割として、電荷の蓄積と放出:電圧変化に応じて電流を流したり止めたりする。フィルタ機能:ノイズ除去、平滑化、タイミング制御などに使用。周波数特性:種類によって高周波・低周波への適応性が異なる。
電子回路における「電気的な緩衝・調整・蓄積」の役割を担う基本部品であり、電源安定化・信号処理・タイミング制御など、回路の動作安定性に直結する構造的要素である。「コンデンサ」との違いは言語的な表現のみであり、技術的には完全に同義である。
電解キャパシタ(Electrolytic Capacitor)
大容量・極性あり。電源回路に使用。
セラミックキャパシタ(Ceramic Capacitor)
小型・高周波対応。ノイズ除去などに使用。
フィルムキャパシタ(Film Capacitor)
安定性が高く、音響・高電圧用途に使用。
タンタルキャパシタ(Tantalum Capacitor)
小型・高容量。極性あり。
半導体・パワー半導体
半導体
電気を通す導体(例:金属)と、電気を通さない絶縁体(例:ガラス)の中間的な性質を持つ物質です。 温度や不純物の影響で、導電性が変化する特徴を持ち、電子機器の制御・スイッチング・演算に不可欠な材料です。
特徴として、スイッチング機能:トランジスタとしてON/OFF制御。整流機能:ダイオードとして電流の向きを制限。演算機能:ICやCPUとして論理処理を実行。
などをもち、現代の電子機器において、電気信号の流れを論理的に制御するための基盤技術となっている。
パワー半導体
大きな電力(電圧・電流)を制御・変換するために設計された半導体素子の総称です。 主に電源回路、モーター制御、電力変換(インバータ・コンバータ)などに使用されます。
普通の半導体が、主に信号の制御として利用されるのにたいし、電力(パワー)そのものを扱うためにパワーという名前を付けて呼ばれることが多い。
主なものに、パワーMOSFET、IGBT、ダイオード、サイリスタなどがある。
パワーMOSFET(Power MOSFET)
高速スイッチング・低電圧用途。
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)
高電圧・高電流制御。産業機器・EVなど
※主に、汎用インバータ、インバータエアコン、太陽光発電システムやハイブリッド車向けなどのパワーモジュールとして利用される。
ダイオード(Power Diode)
整流・逆流防止。
サイリスタ(Thyristor)
大電力制御。交流制御・電力変換。
FRD(ファストリカバリダイオード)
PN接合によるダイオードで、構造や機能は一般整流ダイオードと同じです。一般整流ダイオードは商用周波数の整流に適していることに対し、ファストリカバリダイオードは、逆回復時間(trr)が速く、高周波の整流に適している
SBD(ショットキーバリアダイオード)
PN接合ではなく、金属電極と(n型)半導体接触によって生じる電位障壁(ショットキーバリア)を利用したダイオードです。一般的なPN接合のダイオードと比較して、順方向電圧 (VF) 特性が低く、逆回復時間(trr)が短いため、スイッチング動作に適している。
一般整流ダイオード
外部制御なしで、電圧の極性に応じて自律的に動作する構造体で、交流を直流に変換するために使われる、電流の一方向通過性を持つ半導体素子のこと。
おもに、電源回路(AC→DC変換)、モーター駆動回路、バッテリー充電器などに利用される。
対するダイオードとしては、スイッチングダイオードがある。
スイッチングダイオード
スイッチングダイオードとは、高速でON/OFF(導通/遮断)を切り替えることができるダイオードであり、主に信号処理や論理回路の切り替え用途に使用されます。
特徴として、高速応答:数ナノ秒〜数マイクロ秒で導通/遮断が切り替わる。低容量・低電流設計:信号レベルでの動作に最適化。論理制御用途:マイコン、デジタル回路、通信回路などで使用。
交流そのものを整流する目的ではなく、信号のON/OFFを高速に切り替えるために使われる構造体です
主な用途として、クロック信号の整形、デジタル信号のルーティング、高速スイッチング回路、保護回路(逆電圧遮断)などがあげられます。
抵抗・センサ・制御部品
チップ抵抗(Chip Resistor)
表面実装型(SMD)の抵抗器であり、プリント基板上に直接はんだ付けされる電子部品。 電流の制限、電圧の分割、信号のプルアップ/プルダウンなど、回路の基本動作を支える構造体。
主な用途:電流制限(LED保護など)、電圧分割(センサ入力調整など)、信号ラインのプルアップ/プルダウン、フィルタ回路の構成要素、電源ラインのノイズ吸収(他部品との組み合わせ)
可変抵抗(Potentiometer)
抵抗値を手動または機械的に変化させることができる電子部品であり、回路内の電流や電圧を調整するために使用される。 つまみやスライダーを動かすことで、抵抗値を連続的に変化させる構造を持つ。
主な用途:音量調整(オーディオ機器のボリューム)、明るさ調整(照明制御)、センサの感度調整、電圧分割による基準電圧生成、ユーザー操作によるアナログ入力(マイコン接続)
サーミスタ(Thermistor)
温度によって抵抗値が変化する電子部品であり、温度センサや温度補償回路に使用される。 「Thermal(熱)」+「Resistor(抵抗)」の合成語で、温度を電気信号に変換する構造体。
主な用途:温度検出(家電、バッテリー、モーターなど)、過熱保護(温度上昇による電流制限)、温度補償(回路の動作安定化)、起動時の突入電流制限(NTC型)
LDR(光依存抵抗)
光の強さによって抵抗値が変化する電子部品であり、照度センサや自動制御回路に使用される。 「明るさが強いほど抵抗が小さくなる」という特性を持ち、光を電気信号に変換する構造体。
主な用途:明るさ検出(照度センサ)、自動点灯制御(街灯・バックライト)、光追従回路(ロボット・玩具)、簡易フォトセンサ(マイコン入力)
温度センサ(Thermocouple, RTD)
温度を電気信号に変換する電子部品。熱電対(Thermocouple)は異なる金属の接点で電圧を発生させ、RTD(抵抗温度検出器)は温度によって抵抗値が変化する構造体。 主な用途:産業機器・家電・車載機器の温度監視、ヒーター・冷却装置の温度制御、バッテリー・モーターの過熱保護、環境センサとしての温度測定
光センサ(Photodiode, LDR)
光の強さを電気信号に変換する電子部品。フォトダイオードは高速応答で電流を生成し、LDR(光依存抵抗)は光量に応じて抵抗値が変化する構造体。 主な用途:照度検出、自動点灯制御(街灯・バックライト)、光通信・フォトインタラプタ、マイコン入力による明るさ判定、玩具・ロボットの光追従制御
加速度センサ(Accelerometer)
物体の加速度(動き・振動)を検出し、電気信号として出力する電子部品。静電容量型・圧電型などの構造があり、三軸検出が可能なものも存在する。 主な用途:スマートフォン・ゲーム機の動作検出、車載機器の衝突検知・エアバッグ制御、産業機器の振動監視、ウェアラブル機器の歩数・姿勢検出
ジャイロセンサ(Gyroscope)
物体の回転角速度を検出する電子部品。MEMS技術を用いた小型センサが主流で、三軸回転の検出が可能。加速度センサと組み合わせて姿勢制御に使用される。 主な用途:ドローン・ロボットの姿勢制御、スマートフォンの画面回転検出、車載ナビの方向検出、ゲーム機・VR機器の動作追従、産業機器の回転監視
インダクタ・磁性部品・電源制御
インダクタ(Inductor)
電流が流れることで磁場を発生させ、その磁場によって電気の流れを制御する電子部品。 電流の変化に抵抗する性質(自己誘導)を持ち、主にフィルタ・電源・共振回路などに使用される。
主な用途:電源回路のノイズ除去(LCフィルタ)、スイッチング電源のエネルギー蓄積(DC-DCコンバータ)、高周波回路の共振・整合(RFインダクタ)、モーター駆動回路の突入電流緩和、信号ラインのチョーク(不要な高周波成分の遮断)
チョークコイル(Choke Coil)
不要な高周波成分(ノイズ)を遮断し、必要な直流や低周波信号だけを通すために使用されるインダクタの一種。 “ノイズを絞る”=チョーク(choke)する構造体として、電源ラインや信号ラインの安定化に用いられる。
主な用途:電源ラインのノイズ除去(DCラインの高周波遮断)、信号ラインの高周波フィルタリング、共通モードノイズの抑制(共通モードチョーク)、スイッチング電源のEMI対策、オーディオ回路のハムノイズ除去
トランス(Transformer)
電磁誘導の原理を利用して、電圧や電流を変換したり、回路間の電気的絶縁を行う電子部品。 主に電源回路や信号伝送回路に使用され、電気エネルギーを別の形で伝える構造体。
レギュレータ(Voltage Regulator)
主な用途:電圧変換(昇圧・降圧)、電流変換(電流検出)、回路間の絶縁(安全性確保)、インピーダンス整合(音響・通信回路)、高周波信号の伝送(RFトランス)
DC-DCコンバータ
直流電圧(DC)を別の直流電圧に変換する電子部品または回路であり、電源回路において電圧の昇圧・降圧・安定化を行うために使用される。 入力と出力がともに直流であることが特徴。
主な用途:マイコンやセンサへの安定した電源供給、バッテリー駆動機器の電圧調整(昇圧・降圧)、USB電源からの多電圧生成(5V→3.3Vなど)、太陽光・車載・産業機器の電力変換
スイッチング電源(SMPS)
スイッチング素子(MOSFETなど)を高速でオン・オフ制御することで、電力を効率的に変換・供給する電源回路またはモジュール。電圧変換・安定化・絶縁を高効率で実現する構造体であり、DC-DCコンバータの上位概念にあたる。
主な用途:AC-DC変換(AC100V → DC12Vなど)、DC-DC変換(DC24V → DC5Vなど)、LED照明、モーター制御、通信機器、産業機器の電源供給、バッテリー充電器、PC電源、電源アダプタ
バッテリ(Battery)※実装型
化学反応によって電気エネルギーを蓄え、必要に応じて放出する電子部品であり、電源供給の役割を担う。 ここでは、プリント基板に直接はんだ付け可能な実装型バッテリに限定して扱う。
主な用途:RTC(リアルタイムクロック)のバックアップ電源、一時的な電源保持(停電・電源断対策)、小型機器の動作電源(ウェアラブル・センサ)、マイコンの設定保持(EEPROM代替)
保護部品・EMC対策
ヒューズ(Fuse)
過電流が流れた際に内部の導体が溶断することで回路を遮断し、電子機器や部品を保護する構造的電子部品。 一定以上の電流が流れると意図的に破壊される“使い捨て型保護素子”である。
主な用途:電源回路の過電流保護、バッテリー・モーター・高電力負荷の安全遮断、家電・産業機器・車載機器の故障防止、一部はマイコン周辺の低電流保護にも使用
バリスタ(Varistor)
電圧が一定値を超えると急激に抵抗値が低下し、過電圧を吸収・分散することで回路を保護する電子部品。 “Voltage”+“Resistor”=Varistor(電圧依存抵抗)という名称が示す通り、電圧に応じて抵抗値が変化する構造体。
主な用途:電源ラインのサージ保護(雷・静電気・突入電圧)、通信回路・制御回路の過電圧対策、家電・産業機器・車載機器のEMC対策、一部はACラインの保護にも使用される
ESD保護ダイオード
静電気放電(ESD)によって発生する高電圧パルスから電子回路を保護するために使用されるダイオード型の保護素子。 高速で過電圧を吸収し、回路の破損を防ぐ構造体であり、特にICや通信ポートの保護に不可欠。
主な用途:USB、HDMI、LANなどの高速通信ポートのESD対策、マイコン、センサ、液晶モジュールなどの入力端子保護、タッチパネル、ボタン、外部接続端子の静電気防止、車載・産業機器の外部インターフェース保護
サージアブソーバ(Surge Absorber)
突発的な過電圧(サージ)を吸収・分散することで、電子回路を保護する構造体。主に雷・スイッチング・静電気などによる高電圧パルスから機器を守るために使用される。 主な用途:電源ラインの雷サージ対策、モーター・リレーの誘導サージ吸収、通信回路・制御回路の過電圧保護、産業機器・家電のEMC対策
フェライトビーズ(Ferrite Bead)
高周波ノイズを吸収・減衰させるために使用される磁性体部品。通常の動作信号は通過させつつ、不要な高周波成分だけを遮断する構造体。 主な用途:電源ラインのノイズ除去、マイコン・センサ周辺のEMI対策、USB・HDMI・LANなどの高速信号ラインの高周波ノイズ抑制、スイッチング電源のEMC対策
表示・出力・音響部品
LED(Light Emitting Diode)
電流を流すことで発光する半導体素子。低消費電力・長寿命・高速応答が特徴で、表示・照明・通信など多用途に使用される。 主な用途:インジケータ表示(電源・状態)、照明(バックライト・ランプ)、光通信(リモコン・赤外線)、装飾・演出(看板・イルミネーション)
7セグメントLED
数字や記号を表示するために構成された7個のLED素子の集合体。各セグメントを個別に制御することで、0〜9や一部の文字を表示できる。 主な用途:デジタル表示(時計・温度計・電圧計)、家電・計測機器の数値表示、マイコン制御による簡易UI、産業機器の状態表示
LCDモジュール
液晶(Liquid Crystal Display)を用いた表示部品。電圧によって液晶分子の配向を制御し、光の透過・遮断で文字や画像を表示する構造体。 主な用途:情報表示(家電・計測器・リモコン)、マイコン制御によるUI表示、産業機器・医療機器の画面表示、低消費電力の静止画表示
OLEDモジュール
有機EL(Organic Light Emitting Diode)を用いた表示部品。自発光型で高コントラスト・広視野角・薄型が特徴。バックライト不要で省電力。 主な用途:スマートフォン・ウェアラブル機器の高精細表示、家電・IoT機器のステータス表示、産業機器の小型画面、暗所での視認性重視の表示装置
マイクロフォン(Microphone)
音波(空気振動)を電気信号に変換する電子部品。ダイナミック型・コンデンサ型・MEMS型などがあり、音声入力や音響測定に使用される。 主な用途:音声認識・通話機能(スマートフォン・PC)、録音・集音(カメラ・レコーダー)、騒音検出・音響センサ、IoT機器の音声トリガー入力
スピーカー(Speaker)
電気信号を音波(空気振動)に変換する電子部品。コイルと振動板の構造により、音声・音楽・警告音などを出力する。 主な用途:音声出力(スマートフォン・PC・家電)、アラーム・警告音(セキュリティ・医療機器)、音響再生(オーディオ機器・テレビ)、音声ガイド(案内装置)
タッチパネル
指やスタイラスによる接触を検出し、座標情報を電気信号として出力する入力部品。抵抗膜型・静電容量型などがあり、表示部と一体化されることが多い。 主な用途:スマートフォン・タブレットの操作入力、産業機器・医療機器のUI、ATM・券売機などのユーザー操作、家電のタッチ式操作パネル
技術・実装状態
はんだ付け工程・技法(作業手順)
予備はんだ
部品や母材に事前に薄くはんだを乗せておく工程
仮止め
部品を一時的に固定するための軽いはんだ付け
はんだ二度付け
一度付けたはんだを再加熱して再形成する工程
リフロー
SMD部品を加熱して一括ではんだ付けする工程
手はんだ
手作業によるはんだ付け(精密・補修用途)
ドラッグはんだ
はんだごてを引きずるようにして複数端子を一括処理する技法
ディップはんだ
部品全体をはんだ槽に浸して一括処理する技法
実装管理・品質制御(工程パラメータ)
はんだ付け時間
加熱時間の管理(過熱・未加熱による不良防止)
はんだ付け温度
適正温度管理(部品破損・未溶融防止)
アルコール洗浄
フラックス残渣や汚れを除去するための洗浄工程
フラックス
はんだ付け時の酸化防止・濡れ性向上剤
熱回復力
熱による劣化からの回復性(部品・はんだの耐性)
実装状態・構造観察(接合部の形状)
フィレット
はんだの滑らかな曲面(接合部の健全性指標)
母材
はんだ付け対象となる基板や部品の金属面
実装不良・故障判定(不具合状態)
はんだブリッジ
隣接する端子間がはんだで短絡してしまう不良状態
はんだボール
はんだ付け時に飛散・残留した球状のはんだ粒
はんだクラック
接合部に発生する微細な亀裂(熱・応力起因)
イモはんだ
濡れ性が悪く、接合が不完全なはんだ状態
濡れ不良
はんだが母材に十分に広がらない状態
未溶融
はんだが十分に溶けていない状態(冷却不良)
ボイド
はんだ内部に気泡・空洞が残る不良状態
オープン
電気的に接続されていない(断線)状態
リフトアップ
部品端子が基板から浮いてしまう状態
ランド剥離
基板の銅箔(ランド)が剥がれる物理的損傷
基盤関連
基板の基本構造・分類
PCB(Printed Circuit Board)
電子部品を実装するための導体パターン付き絶縁基板であり、電気的接続と機械的支持を同時に担う構造体。PWBと同義で使用されることもある。
FPC(Flexible Printed Circuits)
柔軟性のある樹脂基材上に導体パターンを形成した配線板であり、可動部や狭小空間への実装に適する。
メタル基板(Metal Board)
放熱性を高めるためにアルミニウムなどの金属層を組み合わせた基板であり、主に高発熱部品(LEDなど)に使用される。
ビルドアップ基板(Build-up PCB)
内層形成後に絶縁層と導体層を積層することで高密度配線を実現する多層構造基板。
コア材(Core Material)
多層基板の内層形成に用いられる絶縁性支持材であり、積層工程の基盤となる。
実装・接続部構造
ランド(Pad)
電子部品の端子と電気的に接続するための導体面であり、はんだ付けの接合点となる。
フットプリント(Footprint)
部品の形状に合わせて設計されたランド配置であり、実装精度と電気的接続の安定性を確保する。
スルーホール(Plated Through Hole)
基板の表裏を電気的に接続するための金属めっきされた貫通孔であり、リード部品の挿入にも使用される。
座ぐり(Spot Face)
基板表面を部分的に削ることで部品の安定実装や内層導体の露出を可能にする加工構造。
表面処理・保護・印刷関連
ソルダーレジスト(Solder Resist)
不要な部分へのはんだ付着を防ぎ、導体の酸化や短絡を抑制する絶縁膜。
プリフラックス(Pre-flux)
基板表面の酸化を防止するために施される保護コーティングであり、はんだ付け前の導通安定性を高める。
スクリーン印刷(Screen Printing)
パターンや文字・レジストを基板に形成するための印刷技法であり、クリームはんだの塗布にも使用される。
スキージ(Squeegee)
スクリーン印刷時にインクやはんだペーストを均一に押し出すための樹脂製工具。
パターンメッキ法(Pattern Plating)
導体パターンに選択的にメッキ処理を施し、不要部分をエッチングすることで配線を形成する製造技法。
加工・分割・製造支援
Vカット(V-cutting)
基板分割を容易にするために境界部にV字型の溝を形成する加工技法。
ミシン目(Perforation)
基板分割性を高めるためにスリットと連続孔を設ける加工構造であり、Vカットと同様の目的を持つ。
ベーキング(Baking)
基板を加熱することで内部の湿気を除去し、はんだ付け時の不良(ボイド・クラック)を防止する工程。
ワークサイズ(Work Size)
製造ラインに投入可能な基板の物理サイズであり、設備対応と歩留まりに影響する設計パラメータ。
材料・物理特性関連
銅箔(Copper Foil)
導体パターン形成に使用される金属材料であり、電解銅箔と圧延銅箔が用途に応じて選定される。
打痕(Dent)
外力によって基板表面に生じるへこみであり、導体層を貫通しない限りJIS規格上は許容される。